ロケバス初体験
スタジオマン時代の話です。
当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった超大人気女優さんの雑誌の撮影が重亀の勤めているスタジオでありました。
スタジオの中での撮影はロケ撮影の後ということでまずカメラマンがスタジオ入りし、撮影セットを組んでおいてロケへ。
先輩スタジオマンと共に初めてのロケバスに乗り込み、大人気女優さんの撮影に同行できることに重亀のテンションはMAX
その日のカメラマンにアシストで入るのは初めて、初めてづくしで緊張しつつも浮き足だっていたことは否めません。
ロケバスといえばトヨタのコースターです。
コースターにもバリエーションがあって、ロケバスに使用されるのは後ろが観音開きになるタイプです。後ろの数席を外してあって、そこに機材を置いたり衣装を吊るすラックがついています。
その日のカメラマンは専属アシスタントを連れておらず、先輩がカメラ周りの補助につき、重亀は雑用係です。
ロケバスで某テレビ局へ行きタレントさんをピックアップ、確か晴海だか豊洲とかの街中でのロケ撮影を行いました。
タレントさんのヘアメイクは済んでいてあとは現場でちょっと手直しする程度という状況
カメラマンが撮影アングルを決めて三脚を立ててポラで試し撮りします。
タレントさんが入るのは諸々決まって最後の最後です。
ポラをめくって確認したカメラマンが重亀に「レフ板もう1枚持ってきて」と指示します。
重亀は一番下っ端の兵隊ですから「ハイッ!」と元気よく返事をして全力ダッシュでロケバスに向かいます。
さっきロケバスの後ろに積んだぞ。右側だ…
ロケバスの後ろの観音開きのドアをガバっと開きました。
ロケバス慣れしていないからこその悲劇が…
まさかの女優さんお着替え中!
扉を開けたその中ではまさかの女優さんがお着替え中!!
そうなんです。
ロケバスの後ろの広いスペースは荷物を置くスペース兼、フィッティングルームにもなっていたんです。
ドアをガバっと開けた重亀は女優さんとバッチリ目が合いました。
パニック陥った重亀(スタジオマン、Lv.1 激弱)は「ゴメンなさい!!」と大声で叫んで慌てて扉を閉めました。
遠くから見ていて事態を察知したカメラマンからはものすごい大声で「バカヤロー!」という罵声が飛んできました。もちろんレフ板なんて忘れてカメラマンの元へ戻って「すいません、すいません」の連呼です。
先輩も「こいつロケバス初めてなんです。ロケバスの注意を教えていませんでした。すいません」と一緒に謝ってくれました。
もちろんこれは先輩のパフォーマンスですがカメラマンの前で「本当に何やってんだお前は!」と怒鳴られお尻を蹴っ飛ばされました。
その日の撮影のことは全く覚えていません。
ロケバスから出てきた女優さんに「失礼しましたッ!」と90度の角度で頭を下げて謝ったのは覚えていますが、どんなふうに仕事が終わったのか、何カット撮影したのか、記憶がありません。
やっとスタジオマンになってカメラマンへの道の第一歩を踏み出したのに、自分のキャリアはこんなところで終わってしまうのか!もう干されてしまってこの業界では生きていけないんだ…と絶望していました。
結論、ノーダメだったんですけどね。相手が相手だっただけに本気で終わったと思いましたよ。
見逃してくれてありがとうございました。その節は本当に失礼いたしました。
皆が聞きたいであろうこと
わかってる!わかってるって!!
重亀はロケバスの後ろで何を見たのかが知りたいんでしょ?
その日仕事が終わった後で先輩からも聞かれました。
先輩はニッコニコで冷え冷えの缶ビールを持ってきてくれて「重亀おまえ、やっちゃったな!で、どうだったのか詳しく教えろよ」と。
噂を聞きつけた他の先輩たちにも囲まれて「どうだったんだよ?」と問い詰められました。
本当に申し訳ない。何も覚えてないんです。
見てはいけないものを見たと思って必死に記憶から抹消したのか、それとも何かしらの機材が女優さんの体を隠していたのか、全くわかりません。
先輩にも「すいません、何もわからないんです」と答えるしかありません。
「てめぇ!1人だけいい思いしてんじゃねぇよ!言えよ!」と袋叩きにされたことだけは忘れません。
先輩方、忘れてないっすからね!
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