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知らぬ間に恨みを買ってしまっていた話

時代別 カメラマン

悪気はなかったんです。本当に…

雑誌のロケ、スタ、ブツ

ロケはロケ撮影、スタはスタジオ撮影、ブツは商品撮影です。
ロケスタといえばロケ後スタジオでモデル撮影、ロケスタブツだとロケ後スタジオでモデル撮影し、さらに商品撮影を意味します。
ちなみにロケ物(ロケブツ)というとロケでシチュエーション活かしの物撮りのことを言うのでちょっとややこしいですね。

ロケを終えてスタジオ入り

確か朝6時とかにロケバスが迎えにきて、福生でロケ(といえば大体どのへんかわかっちゃいますねww)をした後、代○山スタジオでスタジオ撮影と物撮り
ロケが終わったのが昼過ぎでランチを食べてから戻ったので夜遅くなることは確実視されていました。
重亀は途中で家に寄ってもらい自分の車をピックアップしてスタジオへ向かいました。
その方が帰りロケバスさんも他のスタッフも重亀の家を経由しなくて済むからね。機材積み下ろし時間とか考えてもロケバスで帰る人が早く帰れるはず、という気遣いのつもりでした。まさか後々それが誤解のタネになるとは思ってもいませんでした。
スタジオで撮影するのはロケで着用したコーディネートのモデル切り抜きが20カット程度と、確かデニム特集で似たカテゴリーのデニムを置き撮りで3-40点あったかな?あとは小物類だった気がします。
正直ロケ分で1日、スタジオ分で1日だろ!と思う量ではありましたが、ギャラはページ単価なので1日に詰め込んだ方が嬉しい。若かった重亀は「よーし!ガンガン撮ろうぜ!」と気合いを入れて撮影を開始しました。

モデルを早く帰らせたい

モデルはスタジオで切り抜きが終わったら帰れるので早いとこ終わらせて帰らせてあげたいのです。
そういう気を遣ってあげられるカメラマンは喜ばれます。
重亀も良かれと思ってペースを上げました。
元々撮影は早い方なのですが、その日はちょっと「ゾーン」に入った感じがあって、切り抜きが爆速で進行しました。アシスタント君がフィルムチェンジ追いつかないなんてことは過去なかったのに、その日は「ちょっと待ってください!」が2.3回発生しました。
3人居たモデルちゃんは自分の最終カットが終わると「おつかれさまでしたー!」と元気よく帰っていきました。
モデルが帰ればヘアメイクさんも仕事は終了、ヘアメイクさんとヘアメイクさんのアシスタントも帰れます。
全員が帰ったところでセットチェンジの指示を出し、アシスタント君とタバコ休憩をしてから物撮りの商品をもらいにメイクルームに行きました。

 

ぐちゃぐちゃの洋服の山と泣きそうな顔のスタイリストアシスタント

メイクルームは戦場でした。
切り抜きのペースをあげすぎた結果、脱いだ服の整理が終わる前にまた次の脱いだ服が…というラッシュで服がぐっちゃぐちゃに積み上がっていたのです。そこで半べそかきながら洋服を畳むスタイリストアシスタント…
ファッション誌で撮影に使う服はスタイリストがリースで集めてきた服で、後で全部それぞれのブランドやお店に返却しなければいけません。
整理しながら片付ければそれほど大変なことにはならなかったのでしょうが、それを許されないペースでモデルが回っていたのです。

物撮りが終わっても片付いていなかった

重亀はアシスタントの帰宅時間もあるので(と言っても終電間に合わないのはわかっていたので車で家まで送る)物撮りも早く終わらせるべくかなりペースをあげて撮影した。
25時頃、全部の撮影が終わり、カメラを片付けてメイクルームを覗いた時、物撮り開始時の半分も片付いていませんでした。
それでも…重亀は自分の車があるからロケバスを待たずに機材を積んで帰ることができます。
「おつかれさまでしたー!お先です!」と声をかけた時のアシスタントの子の恨めしそうな顔が印象に残っていました。

感動の再会

それから数年が経ちました。広告の撮影で、オールスタッフミーティングの時
「はじめまして!カメラマンの重亀です!今回よろしくお願いします」と挨拶したタレント指名のスタイリストさんに「はじめましてじゃないですよ。私おぼえてますから。○○の撮影で福生行って、その後代○山スタジオで…」
「えーっと、あ!あの時の!!」
「そうです。私も独立してスタイリストになりました。」
「あー、あの日は大変だったよね。今回よろしくね!」とその時は平穏な感じでした。
しかし、その後、打ち合わせが進行していって雑談が混じるようになると「そういえば今回カメラマンさんとスタイリストさんは面識があるようですから、スムーズに進行できそうでよかったです」と制作の人が発したところ「あー、無理ですね。重亀さん、めっちゃ撮るの早くて全然周りみてくれないんですもん。ロケからスタジオに向かう途中で自分だけ車取りに行って撮影終わったらさっさと帰っちゃう人ですし」

め っ ち ゃ ト ゲ あ る や ん ! !

ぬぅわにぉー!この小娘がっ!!と頭に来たものの、現場で「タレント指名のスタイリスト」ってのはなかなかに立場が強いのです。
みんなの前で言いたい放題言いやがって!という気持ちを抑えながら「そんなふうに言わないでよー。モデルとヘアメイクさんを早く帰してあげたかっただけなんだからー」と引き攣り笑顔で返事したものの、「あんなに服が積み上がった撮影、私あれが最初で最後でした」だって。

気遣いは大事だけど、恨みを買わないことも大事

確かその広告は同じタレントで次のクールもあったはずです。
しかし撮影したカメラマンは重亀ではありませんでした。
その広告の撮影の間、失敗したつもりもないし、上がりも綺麗にできていたのですが…
色々考えても仕方ありません。何が理由かはわかりませんし。
この仕事、随分長いことやっていますが、立ち回りが上手い人にはなかなか成れません。
撮影の上手い下手よりも立ち回りの上手い下手の方が重要なんじゃないかと思う今日この頃です。

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