横浜スーパーファクトリー
今日はカメラマンになってからの話
横浜スーパーファクトリーというかなり大型のスタジオがあった。今は安善スタジオと名前を変えている。
その日は広告の撮影で、スーパーファクトリー内のスタジオ2箇所を使っての仕事だった。
2パターンの撮影が必要で、1つはCMの撮影でムービー撮影のセット保持でのスチール撮影、そしてもう1つは白バックでの切り抜き用撮影だ。
ムービーの撮影と切り抜き撮影のスタジオが隣接していればよかったのだが、残念ながら隣合わせのスタジオは取れなかったようだ。大きなスーパーファクトリーの両端のスタジオを行き来することになってしまったが仕方ない。
CM撮影の方は照明技師さんとライトの調整について相談済み、ムービーのカメラが捌けたらすぐに重亀が入ってスチール用に照明の調整が済み次第撮影、そしてその後切り抜き用のセットを組んだスタジオに移動して撮影という段取りだ。
切り抜き用のスタジオのライティングを完成させ、テスト撮影も済んであとはタレントが入れば即本番が撮れる体制を作った。カメラも三脚に据えてあとはシャッターを押すだけ。
〇〇様 控室
切り抜き用のスタジオのセッティングが終わったのでムービーの撮影をしているであろう方のスタジオへ向かう。途中『○○様 控室』と書かれた扉の前を通った。売れっ子女優さんの名前が書いてあった。
この仕事をしていると珍しいことではないので「あー、こっちのスタジオでは○○さんの撮影なんだ…」と、うす〜い感想を抱いただけで控室の前を通過した。

1つ目の撮影無事終了
CM撮影セットの方でムービーが終わるのを待った。
そして重亀の出番である。照明部がスチール用に調整しなおしてくれて撮影セットも組み上がっている。
ぶっちゃけ楽な撮影である。確実にミスなく、タレントに失礼がなく、モニター上にクライアントが「おおー!」と声を出すような一枚を見せればOKなのだ。
ただし、広告の撮影には色々と暗黙のルールがあるし、場の空気を読むというスキルも必要だ。
これをミスると後々問題になる。現場AではOKでも現場BではNGなこともある。
その辺りを言語化してマニュアルにするのは非常に難しい。アシスタントのうちに身をもって肌で感じて覚えなければいけない。代理店の営業担当が「そろそろイケましたね」と言ったところで「よろしいですか?」とカメラマンが全体に確認を取って異論がなければ撮影終了だ。
だがここで異論が出たことはない。些細な角度違いやバリエーション違い、商品の持ち方など、さまざまなカットを撮り終えているからだ。使う写真は1枚である。
OKが出たところでムービーチーム以外のスタッフ皆が切り抜きセットへ移動する段取りだった。
が、ここでデザイナーが今すぐアタリにjpg画像が一枚欲しいと言い出して、そのカットのセレクトに時間がかかった。
切り抜き撮影終わってからにしろよ…
本来なら重亀とアシスタントが一番先に切り抜き用セットに移動してタレントが移動してくるのを待つべきなのだ。
RUN 重亀 RUN
カメラとMacはもう1セット、切り抜きを撮影するスタジオに置いてあるので重亀の体だけ次のスタジオに着けばいい。後のことをアシスタントに任せて重亀は走った。
タレントや他のスタッフを途中で追い抜くのは無しにしても同時にスタジオに到着したい。
スーパーファクトリーの長い廊下をダッシュした。
そして…
全力ダッシュ中の重亀、○○様 控室のドアから出てきた綺麗な女性に激突!!
走りながら「ごめんねっ!!」と謝って切り抜きセットを組んだスタジオへ飛び込む。
タレントを待たせることはなかった。セーフ!
こちらも何事もなく撮影を済ませ、その日の全カット終了
機材を車に積み込み自販機で冷えたコーラを買ってスーパーファクトリーを後にした。
コーラを口に含んで「今日も頑張ったわー」と口に出したその時に思い出したのだ。
あ の と き ぶ つ か っ た の 売 れ っ 子 女 優 さ ん だ !
やべぇ。マジでやべぇ。
いきなり変な汗が身体中から吹き出して、同時に「グエエエェー」と特大級のゲップが出た。
アシスタントがびっくりして「重亀さん!?重亀さん?」と聞いてきたが、「大丈夫、なんでもない。大丈夫なはず…」としか言えなかった。
アシスタントにさえ何があったのかは言っていない。
もう10-15年くらいは経っただろうか。その節は大変失礼いたしました。
ゴメンナサイ!!
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