カメラマンの種類
重亀は雑誌や広告系のカメラマンなので他のジャンルのカメラマンの生態については詳しく知らない。
オレが語れるのは雑誌、広告系カメラマンの話だけだ。
最も多くの人が思い浮かべるであろう七五三や家族写真を撮ってくれる町の営業写真館とか結婚式のカメラマン、学校の運動会を撮ってくれるカメラマン、あとは新聞社なんかの報道系のカメラマンとは別の種類の仕事なので、重亀の常識は他のカメラマンの世界では全く文化が異なったりする。
スタジオマンの仕事内容
雑誌、広告系のカメラマンを目指すなら、貸しスタジオを使いにくるお客さんの荷物持ちやらライトのセッティングをするお手伝いをする「スタジオマン」という業務から始めるのが王道だ。
重亀もスタジオマン勤めでスタジオや現場の基礎を習得した。
貸しスタジオも最近はマンションの一室を改造した謎のハウススタジオ風のものが乱立している。
スタジオマンの修行はハウススタジオではなく白ホリと呼ばれる、真っ白の床にホリゾントというアールのついた壁を備えたスタジオに勤めるのが一般的だ。
今では随分と労働環境がよくなったものの、重亀がスタジオマンをやっていたころは怒鳴られるのは序の口、4×5のカットホルダーを投げつけられたり鉄拳制裁、足蹴にされるのも普通な世界だった。
4×5のカットホルダーって言っても今の人はわからないかな?倉庫から引っ張り出してきて写真撮るのもだるいのでググってくれ。
もスタジオマンは現場のヒエラルキーで言うと一番下の立場になる。
お客さんの入り時間に合わせてスタジオの入り口で待機、お客さんが到着したら荷物を全部預かってスタジオまで持っていく。
コーヒーを用意し、カメラマンからどんなセッティングをするか指示をもらい、ライトや背景紙などを用意する。
カメラマンの指示を仰ぎながらセット組みをし、撮影開始
カメラマンがアシスタントを連れてきていたらカメラ周りには手を出さず、ストロボが全灯スレーブ(同調発光のこと)しているかを確認しつつ、セットチェンジに備えて用意をしたり、カメラマン以外のお客さんにも気を配ったりする。
カメラマンにアシスタントがいない場合はカメラ周りのアシストをどの程度した方がいいか確認してから(頼まれていないのに勝手に機材に触るのはNG)補助にはいる。
大きいスタジオではチーフと2ndに見習いの3名体制、そうでない場合はチーフと2nd、もしくはチーフと見習いという体制でスタジオに入る。
スタジオマンの中でも序列は絶対
先輩が黒といえば白いものも黒なのだ。
先に書いたカメラ周りの業務をスタジオマンが手伝う場合はチーフがカメラ横につく。2ndや見習いがカメラマンの機材に触れることはあまりない。
撮影が終わったらお客さんの荷物をスタジオ出口まで運ぶ。車の場合は機材の積み込みを手伝い送り出し、撮影の終わったスタジオを片付けて掃除をする。
汚れたホリゾント(白で撮影する場合はペーパーなどを使わないで撮ることがほとんど)の床を塗り、一日の業務終了となる。
大体1年半〜2年もスタジオ勤めしていると、顔見知りになったお客さんのカメラマンから「ウチに来ないか?」とお誘いがある。自分の目指している方向と近いカメラマンだったらそこで引き抜かれて専属アシスタントになるのが必勝パターン。
スタジオに3年居ても誰からも声がかからないなら…多分この業界向いてない。
専属アシスタントの仕事内容
撮影現場はスタジオマンをしている間に見ることができたりするが、実は撮影以外の業務というのは非常に重要だったりする。
打ち合わせに同席しないまでも、スタジオマンよりは与えられる情報が多いので現場でカメラマンがして欲しいことをより一層理解できる立場になる。
スタジオ撮影ならばどんなセットを組むのか、必要な機材は何か、事前にスタジオに伝えて用意してもらう機材、レンタル機材屋から借りて用意する機材なども手配する。
撮影現場ではカメラ周りの補助、データの整理(我々の時代はフィルムの番記、撮影データのメモ)、バックアップ、セット組みの指示や補助などを行う。
ロケの場合も必要な機材の手配や準備、荷物の運搬、自然光のみならシェードやレフの扱い、照明機材が必要な場合はカメラマンから指示を受けてライティングを組みもする。
撮影中にすることはスタジオ撮影とほぼ同じだが、自然光の場合は太陽が雲に入るタイミング、雲から出るタイミング、風などの外部要因にも注意を払うのでスタジオよりもロケ撮影の方がアシスタントは忙しくなる。
撮影が終わって事務所に戻ったらデータのバックアップ(フィルム時代は現像所にテストを出す)、NGカットの除外、レーティングをつけてセレクト用画像データの書き出しをおこなう。
撮影がない場合は機材のメンテナンスや事務所の掃除、過去の写真の整理、撮影データ(どんなセットを組んでどんな写真を撮ったか、その時のメーターの出目などを記録したもの)をまとめたり事務所の来客対応といった仕事がある。
レンタル機材屋さんや機材屋さんからの伝票整理、ロケの際の経費(燃料代、高速代、駐車場代など)をまとめておくのもアシスタントの仕事だ。
専属アシスタントはキツいイメージがあるからか、専属アシスタントを通らずにカメラマンになろうとするスタジオマンが非常に多い。最近では専属アシスタントをつけないカメラマンが多くなったので、専属になれるチャンスも少ない。
それでも経験者として言っておきたい。絶対に専属アシスタントは経験しておけ!他人の褌で相撲を取るシミュレーションができるのは専属アシスタントやっている間だけだ。
直接教わらなくても師匠が電話で話している時の話し方や営業電話をかける時の電話の仕方など、撮影以外で吸収するものはたくさんある。
カメラマンは写真以外の必要なスキルが兎に角多い。
それを勉強する機会は専属アシスタントやってる間以外にはないのだから。
いざ独立
専属アシスタントとして経験を積み、師匠への恩返しも済んだあたりで「そろそろ独立させてください!」と師匠に独立したい旨を伝え、後任アシスタントの選定、育成が終わればいざ独立となる。
このへんは師匠によるのだが、重亀の師匠はでかい仕事しかしない人だったので新人の重亀がもらえる仕事などなかった。師匠から仕事をわけてもらうという考え自体甘すぎるとは思うが。
重亀は自分で仕事を取りにいかなくてはならなかった。
若手の雑誌系カメラマンの専属アシとかであれば、師匠と仕事をしている編集さんなどに「独立します」と言えば簡単な取材の仕事などをもらえるかもしれない。
重亀にはそういった伝手は一切なかったので雑誌の編集部にいきなり電話をかけまくった。
「作品集を見て欲しい」と電話をかけると3件に1件くらいは会ってくれた。
作品集を見てもらうと大体「いいですねー。合いそうな企画がある時に連絡します。」と言って帰される。で、後日本当に連絡があるのは5件に1件くらい。つまり15件あたって1件仕事が取れるかどうか。
それでも重亀は「確率高い」と言われてました。
取れた1件で爪痕を残せると次の依頼が来たり、その時一緒に仕事したライターさんから紹介があったり、同じ編集部内で横に広がったり、嬉しいのは出版社内で他の編集部に紹介してもらえたりということがある。
2回目の依頼が来なかったらその編集部とはお終い。数年後再チャレンジするのはありかもしれないが。
独立して最初のうちはまぁ全然仕事はないと思って間違いない。
ロケアシのバイトでもやりながら凌ぐのが良いだろう。近年は慢性的なロケアシ不足なので使えるロケアシならロケアシだけでも十分食っていけるだけ稼げるだろう。
冷静に考えるとやっぱりヤバい
こうやって文字に起こすとカメラマンって本当に地獄だな…
それでも重亀がカメラマンになった頃、先輩カメラマン達は皆羽振りが良くて、俺だって10年後には機材車のボルボワゴンとポルシェの2台持ちしてやるぞ!と夢を見られたものです。
今、スタジオの駐車場に停まってる車みたらプリウス、ステップワゴン、セレナ…たまにベンツのワゴン みたいな世界
車にお金かける時代じゃなくなったというのもあるけど、夢はないよね。
昔は馬鹿みたいにでかいセット組んで撮影していたのも、切り抜きで撮影して背景合成とかだし。
だからカメラマンになろうなんてやめとけ。ww
お金が稼げてちゃんと休みの取れる仕事に就くんだ。そして好きな時に好きな写真を撮る。
若い時代の楽しい時期をキツい修行ですり減らさなくて済む。
カメラマンになりたいと思っているならよーく考えろよ。
そして子供からカメラマンになりたいと言われている親御さん、お子さんにもしっかりこのサイトを読み込ませることをお勧めします。
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